
はじめに

キャロル・キングってどんなアーティスト?
キャロル・キング(Carole King)は、アメリカ出身のシンガーソングライターで、1960年代から70年代にかけて活躍した伝説的な音楽家です。
もともとは作曲家としてキャリアをスタートし、夫であるジェリー・ゴフィンと共に、数多くのヒット曲を他のアーティストに提供していました。たとえば、「The Loco-Motion」や「Will You Love Me Tomorrow」など、今でも多くの人に愛される名曲を生み出しています。
1971年には、自身のアルバム『Tapestry(つづれおり)』を発表。このアルバムは世界中で大ヒットし、「It’s Too Late」や「You’ve Got a Friend」といった代表曲が収録されています。素直で心に響くメロディと歌詞は、多くの人々の心をつかみました。
キャロル・キングの音楽は、日常の中の小さな感情や、女性としての強さとやさしさを丁寧に歌い上げており、今聴いても古びることがありません。
『Tapestry(つづれおり)』というアルバムについて
『Tapestry』は、1971年にキャロル・キングがリリースしたソロ・アルバムで、彼女の代表作にして、70年代を代表する名盤のひとつです。このアルバムは、アメリカだけでなく世界中で大ヒットし、何百万枚ものセールスを記録。グラミー賞では「最優秀アルバム賞」など4部門を受賞しました。
タイトルの「Tapestry(つづれおり)」には、さまざまな人生の出来事や感情が織り込まれた一枚の布のように、曲たちが丁寧に紡がれているという意味が込められているようです。
収録曲とその魅力
アルバムには、「It’s Too Late」「You’ve Got a Friend」「So Far Away」など、時代を超えて愛される名曲が並びます。
- 「It’s Too Late」:恋の終わりを淡々と、でも深い感情で歌った代表曲
- 「You’ve Got a Friend」:友人へのやさしさと信頼を歌った、心あたたまる曲(ジェームス・テイラーもカバー)
- 「So Far Away」:遠く離れた誰かを想う切なさがしみじみ伝わるバラード
『It’s Too Late』を歌ってみよう!
恋の終わりを静かに受け入れる、この美しいバラード。
キャロル・キングの『It’s Too Late』は、歌詞もメロディもシンプルなのに、心に深く響く1曲です。
キャロル・キングの温かくて素朴な歌声、そしてピアノの音色が全体を包みこみ、聴いているとまるで自分の日常が歌になっているような気持ちになります。
英語の発音に自信がなくても大丈夫。ひとことひとこと、気持ちをこめて歌えば、それだけでこの曲の魅力が伝わります。
ピアノやギターの弾き語りにもぴったりで、優しい伴奏とともに歌うと、まるで自分の物語のように感じられるかもしれません。
ぜひ、あなた自身の声で『It’s Too Late』を感じてみてください。
静かな夜や、ひとりで過ごす時間にそっと口ずさむのにぴったりな一曲です。
英語の歌詞と、日本語訳を並べて紹介

「It’s Too Late」の1番の歌詞です。
Stayed in bed all morning just to pass the time
朝からずっとベッドにいたの ただ時間をやりすごすために
なんとなく気持ちが空っぽで、何かをする気にもなれない、そんな切ない朝の雰囲気が伝わってきますね。
There’s something wrong here, there can be no denying
なんだか上手くいっていない それはもう否定できないことよ
気づかないふりはもうできない、関係の終わりが近づいていることを、静かに受け止めている一節ですね。
One of us is changing or maybe we’ve stopped trying
どちらかが変わってしまったのかも あるいはもう努力するのをやめてしまったのかもね
関係のバランスが崩れ始めたことに、気づいてしまった瞬間のことばですね。
あきらめと寂しさが静かににじんでいます。
「It’s Too Late」のリフレインの部分です。
But it’s too late, baby now it’s too late
でももう遅すぎるの ねえ 今さら遅すぎるのよ
Though we really did try to make it
うまくいくように 本当に頑張ったのにね
どんなに努力しても、心が離れてしまったら元には戻れない、そんな現実を受け入れる切なさが、やさしく響いてきます。
Something inside has died and I can’t hide
心の中の何かが死んでしまったの もう隠せないわ
And I just can’t fake it
もう平気なふりなんてできないの
愛情が薄れてしまったことを、自分でも認めざるを得ない瞬間ですね。
やさしいメロディとは裏腹に、感情のリアルさが胸に迫ってきます。
「It’s Too Late」の2番の歌詞です。
It used to be so easy living here with you
昔はあなたとここで暮らすのが とても楽しかったのよ
かつての幸せな日々をふと思い出しているフレーズですね。
あたたかかった過去とのギャップが、この後の歌詞にいっそう切なさを加えています。
You were light and breezy and I knew just what to do
あなたは明るくてのびのびしてたし 私は何をすればいいかちゃんとわかってた
ふたりの間にあった自然なバランスと安心感、それが今は失われてしまったということが、穏やかだけど寂しげに語られていますね。
Now you look so unhappy, and I feel like a fool
今のあなたはとても悲しそうで 私はまるでバカみたいに感じるの
かつては分かり合えていたふたりなのに、今はすれ違ってしまっている、
そのギャップの大きさが、胸に刺さる一行ですね。
「It’s Too Late」のリフレインの部分です。
But it’s too late, baby now it’s too late
でももう遅すぎるの ねえ 今さら遅すぎるのよ
Though we really did try to make it
うまくいくように 本当に頑張ったのにね
これは繰り返しのフレーズですが、前よりもさらに実感を込めて歌われているように感じますね。
「努力した」という過去があるからこそ、「もう無理」という結論がいっそう切なく響きます。
Something inside has died and I can’t hide
心の中の何かが死んでしまったの もう隠せないわ
And I just can’t fake it
もう平気なふりなんてできないの
こちらもリフレインですね。
同じ言葉でも、繰り返されることで心の深いところまで染み込んでくる感じがします。
静かだけど、強い決意が感じられますね。
「It’s Too Late」の3番の歌詞です。
There’ll be good times again for me and you
きっとまた 私たちにもいい時が訪れるわ
別れを受け入れながらも、どこか希望を残したような言葉ですね。
一緒ではないかもしれないけれど、それぞれの人生にまた笑顔が戻ることを願っているようです。
But we just can’t stay together, don’t you feel it too
でももう一緒にはいられないのよ あなたもそう感じてるでしょ?
ここでは、別れの決断が一方的なものではなく、ふたりにとって避けられない現実だということを語っています。
寂しさの中に、静かな理解と共感を求める声が聞こえてきます。
Still I’m glad for what we had, and how I once loved you
それでも、ふたりが過ごした日々には感謝してる かつてあなたを愛していたこともね
別れを受け入れつつも、過去を否定せず、大切に抱きしめているような一節ですね。
苦しくても、愛したことに悔いはない、そんな大人の女性の強さと優しさがにじんでいます。
「It’s Too Late」の最後のリフレインの部分です。
But it’s too late, baby now it’s too late
でももう遅すぎるの ねえ 今さら遅すぎるのよ
Though we really did try to make it
うまくいくように 本当に頑張ったのにね
繰り返されるこのリフレインは、心にじんわりと残る余韻のようですね。
努力したこと、愛したこと、後悔はないけれど、戻れない、そんな感情が静かに胸に迫ってきます。
Something inside has died and I can’t hide
心の中の何かが死んでしまったの もう隠せないわ
And I just can’t fake it
もう平気なふりなんてできないの
この最後のリフレインで、「もう終わってしまった恋」に対する決意と諦めが、やさしい声で深く語られていますね。
キャロル・キングの歌声が、その感情を静かに、でも確かに伝えてくれます。
『It’s Too Late』が多くの人の心に残る理由

キャロル・キングの『It’s Too Late』は、恋の終わりを描いた楽曲ですが、ただの失恋ソングではありません。多くの人の心に深く残っているのは、その「静かに受け入れる姿」と「本音のやさしさ」にあるのだと思います。
1. 感情を押しつけない、静かな語り口
この曲では、別れに対する怒りや悲しみをぶつけるのではなく、「もう手遅れなの」と、どこか冷静に現実を受け止めています。
そこには、無理に引き止めたり、感情をぶつけたりしない大人の愛の終わり方が描かれていて、聴く人の心にそっと寄り添ってくれます。
2. 誰にでも起こりうる心の変化を歌っている
「何かが変わってしまった」「もう前のようには戻れない」、 そんな心の変化は、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
だからこそ、聴いた人が自分自身の過去と重ねてしまい、胸が締めつけられるような気持ちになるのだと思います。
3. メロディと歌声のやさしさ
ピアノを中心にした柔らかなサウンドと、キャロル・キングの温もりのある声が、感情を包み込むように響きます。
泣きたくなるほどつらい別れの歌なのに、どこかホッとするのは、その音楽の力のおかげです。
4. 時代を超えて共感される普遍性
『It’s Too Late』がリリースされたのは1971年。でも、この曲が伝える「終わった恋への静かな気づきと受け入れ」は、いつの時代の誰にとっても変わらない感情です。
だからこそ、世代を超えて多くの人に聴かれ、愛され続けているのでしょう。
『It’s Too Late』 曲情報・リリースデータ

・曲名:It’s Too Late(イッツ・トゥー・レイト)
・アーティスト:キャロル・キング(Carole King)
・作詞:トニ・スターン(Toni Stern)
・作曲:キャロル・キング(Carole King)
・収録アルバム:Tapestry(つづれおり)
・リリース日:1971年2月10日(アルバム)
・シングル発売:1971年4月
・ジャンル:ソフトロック、シンガーソングライター
・チャート成績:
- Billboard Hot 100:1位(5週連続)
- 1971年の年間チャート1位を獲得
- グラミー賞「最優秀レコード賞(Record of the Year)」受賞
『It’s Too Late』は、アルバム『Tapestry』の中でも最もヒットした曲のひとつで、キャロル・キング自身にとっても大きな転機となった作品です。
また、歌詞を書いたのは詩人であり作詞家のトニ・スターン。彼女の繊細な言葉と、キャロルのメロディと歌声が見事に重なり合い、ただの失恋ソングを超えた「人生の一場面」を切り取ったような名曲に仕上がっています。
Tapestry (1971年)

Tapestry 収録曲
1 I Feel the Earth Move
力強いピアノのイントロが印象的なオープニング曲。恋のときめきを地震にたとえた軽快なナンバー。
2 So Far Away
遠く離れた誰かを想う切ないバラード。しみじみとしたメロディが心に残ります。
3 It’s Too Late
淡々とした口調で恋の終わりを受け入れる、大人のラブソング。Billboardで5週連続1位を獲得した代表曲。
4 Home Again
旅先での孤独や、帰りたい気持ちをそっと歌ったやさしい一曲。
5 Beautiful
「人生は美しい」というメッセージをまっすぐに伝える、前向きな歌。朝の始まりに聴きたいナンバー。
6 Way Over Yonder
どこか遠くにある理想の場所を夢見る、ゴスペル調の深みのあるバラード。
7 You’ve Got a Friend
「あなたにはいつも友だちがいるよ」と優しく語りかける名曲。ジェームス・テイラーのカバーでも有名。
8 Where You Lead
「あなたが行くなら私もついていく」、恋人への献身を明るく歌ったポップな一曲。
9 Will You Love Me Tomorrow?
シュレルズのヒット曲のセルフカバー。愛され続けるかどうかの不安をしっとりと歌います。
10 Smackwater Jack
カントリー調のリズミカルな曲。アルバムの中でちょっとしたアクセントになっています。
11 Tapestry
アルバムタイトル曲。人生を「つづれおり」にたとえた、美しく象徴的なバラード。
12 (You Make Me Feel Like) A Natural Woman
アレサ・フランクリンのために書かれた名曲を、自身の歌声でカバー。女性としての誇りと喜びを感じさせます。
大人の洋楽歌ブック120

キャロル・キングのIt’s Too Lateが掲載されている歌本です。
AB判なので、大きくて見やすく、歌詞の上にコードが掲載されているので、どこでも気軽に演奏できます。
「It’s Too Late」「Desperado」「Hotel California」「Imagin」「Wonderful Tonight」「Alone Again」など全120曲が掲載されています。
It’s Too Late(イッツ・トゥー・レイト)YouTube
まとめ

キャロル・キングの『It’s Too Late』は、恋が終わってしまったときの静かな気づきと、そこから生まれる切なさを、淡々と、でも深く描いた名曲です。
怒りも涙もない、ただ「もう戻れない」と受け入れる姿に、私たちは心を打たれます。
派手な演出や大げさな言葉ではなく、日常の中にある感情をそっとすくい上げて歌にする、それがキャロル・キングの魅力であり、『Tapestry』というアルバムのすごさでもあります。
あの日の自分に重ねながら、あるいはこれからの自分にそっと寄り添ってくれるような、そんな一曲。
ぜひ、あらためてじっくり聴いてみてくださいね。
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